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- 北海道から沖縄、ハワイまで。5000社の固定ファンに支えられて
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神社には、実にいろんなものがあります。ちょっと思い出してみましょう。大きなものでは、鳥居や狛犬、賽銭箱。神官がまとうのは、烏帽子、足袋、冠、そして色とりどりの装束。初詣帰りの家族の手には、熊手や破魔矢といった縁起物が。さらには灯籠、注連縄、お神輿に雅楽器…と、思いのほか次々と思い浮かび、あらためて神社と私たちの「近さ」に気づかされます。
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民俗工芸は、私たちにも馴染みの深い神具から、一般の人が見たこともないレアな祭礼調度品まで、神社で必要とされるありとあらゆる品々を開発・製造・販売する企業です。取扱商品は、毎年改訂するカタログ掲載分だけでも2000アイテム。取引先は北海道から沖縄まで全国5000社以上、ハワイやイギリスからネットで注文する神社もあるとか。
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一説には、全国の神社は8万8000社、うち神職が常駐する有人社は2万6000社。「ずいぶんニッチな市場だ」と思われるかもしれませんが、全国のコンビニが約6万店、郵便局が2万局というデータと重ね合わせると、「神社市場」の意外な規模が見えてきます。
同社が毎年、全国の神社に送付するカタログは1万2000冊。ニッチとはいえ確かな市場で存在感を確立し、安定成長を続ける優良企業。それが同社の、リアルなプロフィールです。
- メーカー機能と小ロットの対応力を兼備。そこに他の追随を許さない強みがある
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100年単位の歴史を持つ老舗企業も目立つ神祭具業界において、1974年創業の同社は今なおニューカマーに属します。なのになぜ、全国に根強いファンを広げることができたのでしょう? 素朴な疑問を、湯川社長がスッキリ解いてくれました。
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「弊社は、お供え物を載せる『案』、仏教の仏壇にあたる『祖霊舎』といった木工品や装束などを自社で開発・製造しています。サイズや色など、ご要望のバリエーションは神社の数だけあると言っても過言ではなく、製造部門があることできめ細かく対応できるうえに納期も早いと、ご好評をいただいています。また、民俗工芸を身近に感じていただき、いつでもお客様のお力になりたいという想いを込め、創業以来約45年間、毎年欠かさず商品カタログを発刊し全国のお客様へお届けしています。弊社はお守り1体からでもご注文をお受けしていますが、これは地方の小さな神社さまのニーズにも真摯に対応させていただきますよ、という姿勢の表れです」
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なるほど、メーカー機能と小ロット対応。両方に長けた同社だからこそ、日本中の神社に頼りにされる対応力を発揮できる――同社の強みが明確にわかります。
- 主役は20代~30代。職種を超えて広がる熱気が、成長の原動力
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ニッチ市場で独自のポジションを築いた同社。職種を問わず、仕事のスタイルも独特で魅力的です。商品開発には全社員が参加。全員のアイデアを部門横断の開発選別チームが吟味し、毎年10~20アイテムの新商品をカタログにプラス。コロナ禍の昨年も、鳥居の形をモチーフにした消毒液ホルダーなど、個性的なアイテムがラインナップに加わりました。
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営業は、繁忙期の年末年始を視野に、春から初秋にかけて「今月はこの週の月~金で東京の神社を」というように、月1~2回のペースで全国行脚。いわばスケールの大きなルートセールスです。その途中に取引がない神社があれば、新規開拓にトライ。大抵は「ああ、あのカタログの」と好意的に受け入れてもらえるので、飛び込み営業のシビアさとは無縁です。
営業以外の職種は内勤ですが、交代で営業に同行し、神社の現状をじかに見て、お客様の生の声を聞いて、日々の製品づくりや業務対応に生かしています。
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今後はeコマースの本格導入やSNSの積極活用を通じて、神社市場のさらなる深掘りを目指す方針です。伝統文化を担う企業だけに社内体制も古いのでは…?そんな先入観に反して、社員の主力は20代、30代。男女比は7:3で女性が多く、SNS担当も製造部の20代の女性社員です。2021年4月には、性別や年齢を問わず、社員個々が公平に評価される新しい人事制度がスタート。現在、課長4名のうち2名が女性課長となるなど、早くも成果十分です。
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毎年、初詣を欠かさない。神社の前を通ると、さりげなく一礼することがある。
「うん、それ、あるかも」と思った方。もしかすると、民俗工芸で出会う仕事は、あなたの天職かもしれませんよ。
会社概要
- 株式会社民俗工芸
所在地 | 長崎県佐世保市卸本町18-1 |
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URL | http://minzoku.shop-pro.jp/ |
代表者 | 湯川 太 |
資本金 | 1,000万円 |
設立 | 1974年 |
従業員数 | 38名 |