鈴木俊良さんは、2022年春、熊本県南阿蘇村に開校した「イデアITカレッジ阿蘇(略称IICA=イーカ)」の若き副校長。IICAの創設者でもある井手修身学校長の右腕として、超がつくほど多忙な日々を送っています。鈴木さんは横浜育ちの32歳。縁もゆかりもない熊本の新設校にIターンでジョインした背景と、現在のお仕事についてうかがいました。
鈴木俊良(すずき しゅんすけ)
神奈川県横浜市出身。大学卒業後、大手旅行会社の海外子会社に就職し、入社5か月目からミャンマーの支店立ち上げに従事。2017年、現地で旅行会社を起業するも、クーデターの影響で事業継続を断念し、2021年4月、本格的な開校準備に入ったIICAに参画。現在は副校長として学生募集と学校運営の実務を一手に担う。ミャンマーで結婚した福島出身の夫人と2人暮らし。
阿蘇の風景は、シャン州と瓜二つだった。
こちらに来られるまでは、どんなお仕事を?
- 鈴木さん:
- 旅行会社に入社して1年目にミャンマーに赴任し、支店立ち上げを任されました。大手なのに支店開設のマニュアルもなく、現地スタッフとゼロから始めて手探りで進めました。起業したのは27歳の時。学生向けツアーの企画やカフェの運営などを手がけていましたが、軍事クーデターが勃発して事業継続が難しくなり… 帰国するまでずっと、後ろ髪を引かれる思いでしたね。
何かと波乱万丈な20代だったようですが、海外への思いは学生時代から?
- 鈴木さん:
- はい、大学を2年休学して中国とカナダに留学しました。とはいえ就活では海外一辺倒でもなく、駐在とかで3年くらい外国に住めたらいいなと、そのくらいのテンションではありました。
起業への志向も昔からですか?
- 鈴木さん:
- そうですね、学生時代から漠然と興味はありました。
それでは本題に戻って… IICAさんとの出会いは?
- 鈴木さん:
- ミャンマーに井手さんとの共通の知人がいて、「これ鈴木君ぴったりじゃない?」と勧められたのがきっかけです。募集情報にあった「教育」「地域活性化」などのキーワードに魅かれ、公募に応じました。
鈴木さんは横浜育ちですが、南阿蘇村という立地はネックになりませんでした?
- 鈴木さん:
- 全然です(笑)。ミャンマーでは南阿蘇の比じゃないところにいましたし。シャン州といって、最大都市のヤンゴンから車で12時間もかかる地域です。井手さんから学校周辺の写真を見せてもらった時は「おお、シャン州に似てる!」と、妻と盛り上がりました。後ろ髪系のもやもやした気持ちが消えたのも、あれがきっかけだったかもしれません。
阿蘇とシャン州、普通の人は気づかない素晴らしい接点でしたね。あえてうかがいますが、報酬面はいかがでした? 井出さんは「破格の高給というわけでは…」とおっしゃっていましたが(笑)
- 鈴木さん:
- それもまったく考えなかったですね。1円でも多く稼ぎたい!というタイプでもないですし、自分の市場価値、みたいな発想がそもそもなくて。英語が使えるからいくら、海外経験があるからいくら、というような。生活できないレベルだと困りますが、もちろんそんなことはないですし。
南阿蘇村、住んでみていかがですか?
- 鈴木さん:
- いいですね。毎日目が回る忙しさですが、合間を縫って妻と温泉に出かけたりしています。妻も阿蘇の環境が気に入っているようです。ミャンマーでは、僻地といわれるような村にホームステイの学生を送り、現地にお金が落ちる仕組みをつくるような企画を考えていました。現地でやりたかったのは、埋もれている地域を見せ方やコーディネートを工夫してポテンシャルを引き出すような仕事。そういう意味でも、ここは魅力的です。
なるほど、熊本はまだまだ震災復興の途上ですし、そもそもIICAに集まった1期生33人自体が可能性の原石ですもんね。
33通りの未来を、見届けたい。
では今のお仕事についてうかがいます。学生募集が鈴木さんのメインミッションと聞きましたが、実際どうやって集めたんですか?
- 鈴木さん:
- まずは熊本と近県の高校をまわりました。ある高校では、ミャンマーやカンボジアとオンラインでつないで英語で話す授業をさせてもらうなど、いろいろ工夫を。外国人学生のスカウト先は主に日本語学校ですね。それとは別にクラウドファンディングを立ち上げ、ミャンマーから学生を呼ぶプロジェクトも功を奏し、4人が入学しました。
すごいですね! とはいえ、ご苦労も多かったでしょう。
- 鈴木さん:
- そうですね、いちばんキツかったのは、何名か集まり始めた時期。これ以上集まらなかったらどうしようかと。まったく集まらなければ開校延期という最終手段も取れますが、それもできませんし。最終的にはITソリューション学科23名、グローバルITビジネス学科10名と、定員には届きませんでしたが、なんとか形に。10人いればグループワークも十分できますから(笑)。募集の段階からIICAの売りにしていた外国人学生も、インド、ネパール、中国、フィリピン、ミャンマーと、最終的に5カ国10人を確保。外国人材は動きが遅いのでなかなか数がまとまらず、秋ぐらいまでは正直かなりビビッてました(笑)
鈴木さんが教壇に立つ機会もあるのでしょうか?
- 鈴木さん:
- はい、「暮らしの経済と法律」という科目を受け持っているので。ただ、僕が一方的に講義する座学ではなく、学生個々が自学自習のスキルを鍛える時間として活用しています。オンラインの検索ツールやプログラミング言語を紹介して、テーマに沿って各自で深めた内容をクラス全員で共有して議論する、といったスタイルですね。最初の授業では、震災後に村から撤退した東海大学の遺構を見学し、熊本地震をテーマにディスカッション。フィールドワークの要素を組み込んだ学びは、IICAの教育全体に共通する特色でもあります。
あらためて、鈴木さんから見た「IICAのいいところ」は?
- 鈴木さん:
- 寛容なところですね。何かを始めたり提案したりした時に、否定されるということがほとんどありません。あと、やっぱり新しい学校であること。単に新設校であるというだけでなく、教育内容のいたるところに、新しいチャレンジを組み込んでいます。たとえばITソリューション学科に設置したサイバーセキュリティのコース。大学でも九大にしかなく、専門学校では初めての試みです。
この質問はまだ早いかもしれませんが、Iターンしてよかったですか?
- 鈴木さん:
- よかったと思いますよ。毎日忙しいですが、無理してる感覚はまったくなくて、普通に楽しく仕事できています。仕事が楽しいと思えること自体が、人によってはうらやましいことだったりするじゃないですか。
なぜ楽しいと思えるんでしょう?
- 鈴木さん:
- ひとつは、僕の性格なのかもしれないですね。ゲーム感覚で仕事をするタイプというか、未知のテーマと格闘しながら答えを探すプロセスを楽しむ…そんな感覚が確かにあります。
学生との関係はいかがですか?
- 鈴木さん:
- 学校では、学生が教員や職員を「先生」と呼ばないのが基本ルール。学生と私たちは、教え教えられる関係ではなく、対等な立場だと考えるからです。今ではもう、学生も職員も教員も、お互い全員の名前を覚えたんじゃないでしょうか。
最後に、学生たちへのメッセージを。
- 鈴木さん:
- 1期生全員と、ファーストコンタクトの時からずっと私が接してきました。まだ始まったばかりではありますが、彼らがどう成長し、どんな道に進むのか、しっかりと見届けたいですね。
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