ルミエールの“普通”は、かなり特別だ
買い物に車を使う人なら、休日のスーパーやショッピングモールで駐車場の空きスペースを探してさまよった経験があるだろう。それほどの繁盛店でも、平日となると打って変わって余裕がある。それが世間の常識というものだが、ルミエールはそうではない。開店から1時間とたたないうちに駐車場はほぼ満杯、レジには早くも支払いを待つ人の列ができている。そしてどのカートにも、こぼれんばかりに商品が積まれている――店舗によって多少の違いはあるが、これがルミエールの、平日の風景だ。
初めて目にする特別な活気に、店舗見学に訪れた就活中の学生は一様に心を動かされる。いっぽう百戦錬磨の同業者は、売場を行き交う常識破りの客数と買い上げ点数の多さにカルチャーショックを受ける。ルミエール全23店舗の1日あたりの平均来店客数は、約5千人。多少なりと流通業に関わったことがある人なら、驚かずにはいられない数字だろう。だが、これはまだほんの序の口だ。
どんな企業も、事業の拡大と売上高の向上を目指している。小売業であれば、これに店舗網の拡大が加わる。だが、ルミエールにはこの種の計画が一切なく、店舗あたりの売上目標さえないという。 「私は2002年入社ですが、売上目標を設定しないのはそれ以前からの伝統のようなものです」と話すのは、石井清香さん。ルミエールを展開する三角商事株式会社で、総務全般と採用業務を担当するリーダーだ。
- 石井さん:
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私も総務に来る前は久留米のお店で衣料品売場を担当していましたが、考えることと言えば、お客様にもっと喜んでもらえることはないかということだけで、会社を大きくするとか会社の利益がどうの、といったことは一度も考えたことがありません。経験がないので実感はないのですが、もし店舗をノルマで縛ると、売上金額や利益の達成が目的になり、“お客様のために”という大切な原点を見失ってしまうかも。
だからでしょう。仕事のやり方を縛るマニュアルの類も、当社には一切ありません
売場で大切にされている考え方とはどういうものなのか。石井さんが続ける。
- 石井さん:
- お客様の暮らしが少しでも豊かになるよう、商品を少しでも安く販売し、楽しくお買い物していただくことを通じて、お客様に喜んでもらいたい。これが私たちの理念であり、目指していることのすべてです。社員はそのために何をすればいいか、それだけを考えて、試行錯誤を重ねながら自分で動きます。新卒、中途を問わず、入社動機は人それぞれですが、理念に深く共感して当社を選んだという点は共通しています
お客様だけを見て考え、動く。それだけで現場が回るのか?と考えてしまうのは、ありきたりの常識にとらわれすぎている証拠かもしれない。来店客数に表れた地域からの分厚い支持、それが何よりの答えだ。
- 石井さん:
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お客様に喜んでもらう手ごたえを知った社員は、もっと喜んでもらおうと、ますます努力します。自分で売上目標を設定して欠品ゼロに挑んだり、他の売場と連携して知恵を絞る場面も。
たとえば夏の季節商品の展開では、衣料品では水着やタオル、日用雑貨で言うと浮き輪というように、部門横断で売場の割り振りを検討します。その際、“自分はこう売りたいからこれだけ確保したい!”“いやいや、こっちの売場の方が重要だ”というように、かなり激しく議論を重ねますが、その動機は“自分が売りたいから。会社の売上に貢献したいから”じゃなくて、あくまで“お客様に喜んでもらいたいから”だけなんですよね
なるほど、目指す方向性がシンプルでブレないから、迷わず努力できるということか。自分自身に変なリミッターをかける必要がない毎日、とも解釈できそうだ。そんな日々は、どんなに気持ちいいことだろう。ルミエールの売場に流れる空気感が、なんとなく、それでいて確かな手触りを伴って、伝わってこないだろうか。
理念は、技術を超える
「さきほど、理念に共感して入社した社員が多いという話をしましたが、それと同じくらい、当社の三角勝信社長の人柄に惹かれて…と話す社員も目立ちます。中途入社の場合は特にそうですね」と石井さん。理念に共感して臨んだ社長面接で入社を決意した社員は、三角社長のどんなところに惹かれたのだろう。
- 石井さん:
- よく聞くのは、社長らしくないというか、威圧的な空気がまったくないということ。フランクに会話するうちに、この会社だったら自分がやりたいと思うことがいろいろできそうだと思えてくる、と。もっと大企業っぽい組織をイメージしていたけど全然違って、やりやすそうだと話す人も多いですね
従業員数2000人規模の会社にしては、社長と社員の距離はかなり近い。毎年1回、社長面談も設定されている。「バイヤーをやりたい」など、この席で伝えた希望はかなりの確率で叶えられるそうだ。また社長は土日を中心に全店を巡回していて、社員やパートさんと立ち話する場面も多い。折に触れて社員の声を聞き、仕事ぶりをリアルに見る日々の中で、一人ひとりの希望や適性を把握。そのうえで、社長から個々の可能性を生かす提案が投げかけられることも多いという。
- 石井さん:
- 社長はよく、社員に宿題を出します。総務で私と一緒に働いている子で、入社1年目で“こんなに安く売って大丈夫…?”と、粗利を気にする社員がいたんですね。社長はその話を聞いて、新人にしては視野が広い、販売計画を考えるのも勉強になるんじゃ…と、あまり重たくならないよう、私たちを通じて課題を出してくれるんです。いま商品開発部でオーガニック漬物を開発している入社4年目の社員も、社長の推薦もあって、日用品担当から抜擢されました
ルミエールを深く知るにつれて、こうした細やかな心づかいは、社長と社員の関係だけでなく、お客様と店舗の関係にも共通する姿勢であることに気づく。会社と社員の関係も同様だ。2020年の最初の緊急事態宣言の時期、全国チェーンのGMSがコロナ禍でも頑張る社員に一時金を支給したニュースがメディアを賑わせたが、ルミエールではそれ以前に支給していたという。
- 石井さん:
- 当社では社員やパートさん、そのご家族、それにお取引先への感謝の意味を込めて、毎年ホテルで盛大な謝恩パーティを開いていますが、昨年は中止せざるを得ませんでした。その代わり何か、わぁっ!と喜べるようなサプライズを、という提案が社長からあり、総務のみんなで考えて、和牛1キロを全員にプレゼント。肉が苦手な人には同価格のシャインマスカットを贈りました。今年も残念ながら中止なので、今度は、例年お世話になっているホテルさんの助けになれば…と、そのホテルが出している高級ローストビーフとハンバーグのセットを全従業員に贈ることに。いま準備の真っ最中です
同社が掲げる3つの理念の1は、すでに何度も触れた「よい商品をより安くお客様に提供」すること。続く理念の2は「社員の物心両面の幸福を実現」、3は「地域とお取引先に貢献」となっている。石井さんのお話から、ルミエールでは理念がそのまま実現されていることがわかる。 こんな話がある。ルミエールの盛況を目にした経営コンサルタントが、こう漏らしたという。「理念は技術を超える」。なるほど、理念は技術を超える、理念は技術を… ルミエールが選んだ“生き方”がストンと、心に落ちてきた。
ただお客様だけを見て、全力を尽くす日々
今後に向けた構想についても聞いてみた。オンラインショップの充実、新しいECサイトの構築など、課題はいろいろあるが、「まずは店舗改装を積極的に進めている」と石井さん。総務部のオフィスがある太宰府店も、昨年5月のリニューアルオープン後、もともと多かった客数がさらにアップしたそうだ。
- 石井さん:
- 商品を安く売るだけでお客様の生活をサポートできる時代じゃない、という考え方のもと、2018年オープンの志免店から、地域の交流拠点をイメージしたイベントスペースを店内に設けています。太宰府店のリニューアルの際には、今まででいちばん大きなスペースを確保したのですが、残念ながらコロナの影響でまだ…早く活用したいですね
店舗網の拡大や売上増大は眼中にないが、時代に沿って変わる「地域の支え方」を考えるミッションは、これからも続く。そんなルミエールで活躍できる人材像について、石井さんはこう話す。
- 石井さん:
- まず理念に共感できる人、これは変わりません。業界経験のある方には、バイヤーや店長の候補にふさわしいリーダーシップを期待したいですね。もちろん、商品を売ること買うことを楽しめるいい意味での“商売っ気”がないと、ルミエールの仕事を楽しむことはできません。あとは、ルミエールらしいDXの形など、時代に合わせた変化の形を追求する姿勢があれば、やりたいことをいくらでも実現できると思います
石井さんのお話を聞く中で、社内で時折、社長主宰の「論語の勉強会」が開かれているという話題が心に残った。論語と言えば、「雍也第六」の中に「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」という一節がある。 「理性で知ることは、感情で好むことの深さに及ばない。感情で好むことは、全身を打ち込んで楽しむことの深さに及ばない」という意味らしい。より平易な解釈を探すうちに、こんなフレーズに行き着いた。
「何事も楽しんでやりなさい。楽しんでやることで、思わぬ力が発揮されるものなのだ」
この言葉が、ただお客様だけを見て、日々全力を尽くすルミエールの社員の姿に重なった。
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