さまざまな医薬品やワクチンの材料となる、タンパク質。それをカイコから作り出す技術で、国からも注目されているベンチャー企業「KAICO株式会社」。前人未到の研究開発に挑む会社の素顔に迫りました。
新型コロナウィルスの世界的流行で、感染症の恐ろしさをいやというほど味わった私たち。ワクチンを輸入に頼っているなど、多くの課題も目の当たりにしました。そんななか、熱い注目を集めている九州大学発のベンチャー企業がKAICO株式会社(福岡市西区)です。
創業は2018年4月。まだ17名ほどの会社ですが、すでに8億円を超える出資金を集め、国の国産ワクチン開発プロジェクトにも参画しています。
事業のベースとなっているのは、九州大学で長い間積み重ねられてきた、カイコの研究です。カイコには、カイコにしか感染しないバキュロウイルスというウイルスがいます。このウイルスの遺伝子を特別な技術で編集したうえで、カイコに挿入すると、カイコの体内で特定のタンパク質を作ることができるのだとか。タンパク質は創薬のたねともいわれる、医薬品の重要な材料。しかもカイコを使えば、少量多品種開発や、スケールアップも容易に行うことができます。
同時に、注射を必要としない経口ワクチンの開発にも挑戦しています。すでに実用化が目前に迫っており、まもなく豚用経口ワクチンの販売をベトナムで始める予定だとか。1頭1頭に注射を打つという膨大な手間を省けるメリットは世界共通。その需要は他の畜産業や水産業、ペット業界にも大きく広がっています。そして同社がめざす最終的な目標は、いまだ前例のない、ヒト用経口ワクチンの開発―。
今回はそんなベンチャー企業に転職し、日々チャレンジを続けている皆さんにインタビュー。ご経歴やKAICOで見つけたやりがい、社風などを語ってもらいました。
(左)佐々木友樹(ささきともき)さん
1987年、宮城県仙台市出身。東北大学理学部生物学科から修士課程へ進み、卒業後は熊本の製薬会社に就職。31歳の時に神奈川県にある創薬ベンチャーに転職したのち、2021年にKAICO株式会社へ2度目の転職をはたす。現在は数少ないマネージャーの1人として、ヒト用ワクチンの研究開発を担当している。
(右)山田大智(やまだだいち)さん
1994年、熊本県熊本市出身。鹿児島大学理学部生命科学科から修士課程へ進学。卒業後は大手飼料会社に就職し、養殖魚のエサの研究開発を担当していた。2022年にKAICO株式会社へ転職。現在はスタッフとして、さまざまなプロジェクトを支えている。
熊﨑有希(くまざきゆき)さん
長崎県西彼杵町出身。大阪大学経済学部を卒業後、地方銀行に就職。働きながら九州大学ビジネススクールで学び、九州大学経営学修士(MBA)を取得。その後、結婚を機に東京へ移住。東京では経営コンサルタントとして働いていたが、ビジネススクール時代の同期・大和建太氏(KAICO創業者)に誘われて、KAICO株式会社に入社。現在はCFOとして、財務から採用活動までバックオフィス業務全般を切り盛りしている。
ここなら、ワクワクしながら、働ける
―佐々木さんと山田さんはKAICOに転職する前も、研究開発をされていたんですよね。まずはそれぞれのご経歴を教えていただけますか?
- 佐々木さん:
- 僕は、東北大学の出身です。大学院では免疫系の研究をしていました。遺伝子に欠損があるマウスを使って、病気を発症させ、体内でどんな免疫反応が起きているのかを調べていました。
- 熊﨑さん:
-
だから、佐々木さんは治験の領域にも詳しいんですね。
- 山田さん:
-
僕は鹿児島大学の大学院で、ナマズの研究をしていました。かなりマイナーなんですが……魚の味覚を研究する研究室だったんですよ。
- 全員:
- え~!魚の味覚!?魚って味覚あるんですか!?
- 山田さん:
- ええ、なかなかマニアックな世界で(笑)。味蕾という味を感じる器官があるんですけど、実はナマズって人間の十万倍くらい発達しているんです。そこに刺激を与えながら、遺伝子発現を見て、脳のどの部位の活動が活発になっているかを調べる研究をしていました。例えば、うま味のあるグルタミン酸を与えると、脳のこの部位が活動するとか。
- 熊﨑さん:
- なるほど!ナマズが美味しいと感じているかどうかがわかるわけだ。めっちゃ面白い(笑)。
―お二人とも、それぞれのフィールドで研究をされてこられたんですね。そこからどんな会社に就職されたのですか?
- 佐々木さん:
-
僕が最初に就職したのは、熊本にある製薬会社です。そのときに初めて九州に来ました。
その会社ではワクチンの研究や品質試験などを担当していたのですが、30歳を過ぎた頃から、自分の将来のキャリアを考えるようになったんです。技術者としてこれからどうしようかな?と。
当時は品質管理の部署で働いていましたので、もっと研究寄りの仕事がしたかったし、ワクチンだけじゃなく他のこともしてみたいなという思いもあり、神奈川にあった創薬ベンチャーに転職したんです。
それが31歳の時。そこではスクリーニングなど、創薬の研究をしていました。
―なるほど、1回目の転職先も、KAICOと同じくベンチャー企業だったんですね。そこも離れることにしたのはなぜでしょうか?
- 佐々木さん:
-
子育ての環境です。熊本で出会ったパートナーと結婚して、神奈川で働いているときに1人目の子どもが生まれたんです。でも頼れる人が誰もいない環境での子育ては大変でした。ちょうどコロナ禍のときでもあったので、妻と子どもはずっと家の中に閉じこもっている状態。妻の機嫌もだんだん悪くなる一方で…(苦笑)。
そんななか2人目の妊娠がわかったので、この環境で子育てを続けるのは厳しいなと思い、妻の実家がある熊本への移住を考えました。でも仕事は何でもいいわけではなくチャレンジする仕事がしたかったので、ベンチャーに絞って転職先を探しました。
―ベンチャーにこだわった理由はどういったところにあったのでしょうか?
- 佐々木さん:
-
社員がある程度いる会社は、仕事が部署ごとに分散化されていますよね。そうなると1人でやれることが限定されちゃう。それより自分は、何でもやりたいという気持ちが強かったからです。
ところが、熊本はベンチャーの求人が少なかったんですよ。気になる会社に直接問い合わせのメールをしても、「今は募集してない」という返事ばかり。そんなときにたまたま見つけたのが、KAICOだったんです。
―KAICOという会社をはじめて知ったときの印象は?
- 佐々木さん:
-
虫かぁ!というのが一番最初に頭の中に出てきた言葉でしたね(笑)。「おもしろそうだな」という意味での驚きです。それまで虫を使って研究をしたことがなかったので。
虫を使ってワクチンを作るなんて無理だろう?と思った一方で、だからこそ、実現できたらかなりおもしろそうだな、とも。
―想像もつかない研究にワクワクを感じたということですね。実際に転職を決めたポイントは何だったんでしょう。
- 佐々木さん:
- まずは九州のベンチャーで働けるということと、チャレンジングなことができること。一方、技術的な基盤は九州大学にありますから、技術的に間違いがない。ちゃんとしているなと、面接のときに感じました。自分がそれまでやってきた経験を活かしながら貢献できそうだという絵が描けましたし、ここなら楽しそうだなと思いました。
―佐々木さんが重視する「楽しさ」についてもう少し教えていただけますか?
- 佐々木さん:
-
やっぱり、「ワクワクしながら仕事ができる」ということじゃないかなあと。周りから無理だと言われるくらいチャレンジングなことができたり。自分にはできそうにないことができたり。
あと、ここなら、いろんなことができそうだなと素直に思いました。面接のときに話をしたCTOの谷口さんも「今、何でもやってるんです」って言ってて(笑)。
- 熊﨑さん:
-
うちのCTOは本当に何でもやってますからねぇ(笑)。いまだに電話番もしてますから(笑)。
それに、品質保証の仕事をするために入ってきた社員の初仕事が「商品の箱のデザインをパワポで一生懸命作る」だったことも…。それくらい、最初は本当にお互いがそれぞれ少しずつ越境しながら全力で取り組んできました。
- 佐々木さん:
- ああ、そういう環境なんだな、大変そうだなぁ、と思ったんですが(笑)、でも、自分もこの人達といっしょに何でもやってみたいと思ったんですよね。
未来も、おいしい魚やお肉を食べるために
―では次に、山田さんの前職を教えてください。ナマズの味覚というニッチな研究分野での研究を経て、どのようなファーストキャリアを選択されましたか?
- 山田さん:
-
僕は飼料会社に就職して、最初の2年は養殖魚のエサの開発を担当していました。エサの配合を考えたり、そのエサを食べた魚がどういう状態になっているのかを調べたり。ですからひたすらサンプリングの日々だったんです。研究所内で飼育した魚をさばいて、臓器を取り出して、調べて。あと、病気や寄生虫に侵された検体も送られてくるので、それも同様に調べて、エサで病害虫を防ぐ方法も研究していました。
ところが3年目から、愛媛県の宇和島に異動になったんです。職種も、開発職から営業職に。日々、養殖業者の方々に対して、飼料の提案営業をすることになりました。
養殖業者さんは今、どこも人材不足。「エサはお前のところから買うから、代わりに手伝ってくれないか?」と声を掛けられることも少なくありません。そうしたお手伝いの一環として、モジャコ(ブリの幼魚)にワクチンを打ったりもしていました。
―えっ?養殖魚にもワクチンを注射するんですか?
- 山田さん:
- そうなんです。僕もびっくりしたんですけど、生簀の魚を船にあげて、1匹ずつに注射するんです。朝4時から始めて、夕方の5時までずっと打ってるんです。1日に10万匹とか(苦笑)。
- 全員:
- ええ!?!?!?10万匹!?!?!?大変すぎる……!!
- 山田さん:
-
そう思いますよね。半年ほど養殖業者さんの仕事を間近で見ながら、これはかなり大きな課題だなと感じました。
自分なりにいろいろ調べたんです。注射ではなく経口ワクチンなら楽になるんじゃないかと思って他の飼料会社さんや製薬会社さんに相談したのですが、「注射ワクチンがあるからいい」と口をそろえて言われました。
それでもあきらめきれず模索していたときにたまたま見つけたのがKAICOでした。経口ワクチンにチャレンジしていると知って、興味がわきました。今後のことを考えれば、経口がいちばん簡単だし、将来性もある。もともと営業をしながら、なにか他に面白い仕事ないかな?と探し始めていたので、すぐに応募しました。
―KAICOに転職を決めた決め手は何だったのでしょうか?
- 山田さん:
-
候補は他にもあったんですけど、いちばん面白そうなのはどこかな?と考えて、KAICOに決めました。
飼料メーカーで働いている時、自分では制御できない問題をいろいろ感じていたんです。エサ代は高くなる一方だし、魚の販売価格は低いまま。後継者もほとんどいなくて、養殖業者がどんどんつぶれていく。畜産業も同様の状況で。このままだと、未来は、魚も肉も食べられなくなってしまうかもしれない。なんとかできないか?とずっと考えていました。KAICOに決めたのは、そんな問題に少しでも貢献できそうだと思ったからです。
- 熊﨑さん:
- 山田さんが入ってきたときは、まだ、経口ワクチンの開発が始まる前だよね。
- 山田さん:
-
やっと予算が通ったくらいの時だったと思います。
でも、たとえ実現できなくても、チャレンジすることに面白みがあると思っていました。前の会社に残っていれば正直お金は稼げたと思います。でも単にお金を稼ぐだけよりは、そっちのほうが働いていて楽しそうかなという思いがあって。
前職のときもいろいろと新しいものを会社に提案していたんですけど、グループリーダーからスタートして、課長、所長…と、すごい承認リレーを通過しないといけなかったんですよね(苦笑)。そういう環境より、KAICOのほうがチャレンジできそうだなと思いました。
審査機関からも「前人未到」と言われたプロジェクト
―では次に、佐々木さん、山田さんの現在のお仕事内容を教えてください。
- 佐々木さん:
-
いろいろやっているので、うまくまとめられるかなぁ…?(笑)。僕はマネージャーとして、研究開発全般に携わっています。
KAICOは受託開発、試薬製造、自社開発の3事業が柱となっているのですが、自分は主に自社開発事業を担当しています。
具体的な業務内容としては、ヒト用ワクチンの研究開発が中心。どうすればPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構※厚生労働省所管の独立行政法人。医薬品や医療機器の承認審査・安全対策等を担う機関)に承認してもらえるのか。そのためには、どういう品質のものを作らないといけないのか。どういうフローで、レギュレーションの壁を超えていくのか、ということをトータルで検証しています。
- 山田さん:
- 僕はスタッフとして、複数のプロジェクトにアサインしています。受託開発もするし、試薬製造も、経口ワクチンも。業務の内容としては、今は評価が多いですね。
―業務内容についてイメージしやすくするために、作業内容についてもう少し詳しくお話ししていただいてもいいですか?
- 山田さん:
- まず、カイコのさなぎに、遺伝子を組替えたバキュロウイルスを注射します。時間を置くと、さなぎの中でバキュロウイルスとともにタンパク質が増殖するので、さなぎをつぶして、遠心分離して、タンパク質を取り出します。あとは、できたタンパク質がどういう状態にあるのかを調べたり、与えた豚や魚のサンプルの測定をしたり。バキュロウイルスの遺伝子のデザインをする仕事もあります。
- 熊﨑さん:
- その指示を山田さんたちにするのが、佐々木さんたちマネージャーの仕事ですよね。
- 佐々木さん:
- はい。僕はマネージャーなので、自分で作業をするというよりも、みんなに「あれして、これして」とお願いをしつつ、全体を見渡しながら調整をしていく仕事です。評価をお願いして、出てきた結果に対して、「ここが問題だから、こういうことをやって解決してみようか」とアドバイスしたり。試行錯誤の地図を作っていくような仕事ですね。
- 熊﨑さん:
- ヒト用ワクチンの開発になると、レギュレーションを通過するために、どういうデータが必要で、そのためにはどういう実験をしないといけないかなど、出口を見つめながら、そこまでの道のりを描いていく必要があるんです。すごく大変なポジションだと思います。
―お話を聞いていると、通常のプロダクトマネージャーよりも、はるかに領域が広そうに感じますね…。
- 佐々木さん:
- うちの面白いところは、対象がヒトだけじゃなくて、豚だったり魚だったりと幅広いこと。対象が変わると求められる法律も大きく変わってくるので、そういう意味では、考えなきゃいけない幅もすごく広いです。試薬の開発になると、また話が変わってくるし。この幅広さは創薬やバイオの世界でもなかなかないと思います。ときどき、「あれ?どっちだっけ?」となることもあります(笑)。
―通常の企業では、そこが細分化されているんですよね?
- 佐々木さん:
-
そうです。だから、そこの専門家になっちゃうんですね。その点、ベンチャーは、いろんなことを1人でやらないといけません。前職のときも、実験のデザインから実際の作業まで1人でやっていました。でも今は、そのもっと前から。レギュレーションを突破するために何をすればいいのか?を考えるところからですから。
―そもそもの話で恐縮なんですが「カイコから作ったタンパク質で、ヒト用のワクチンを作り、実用化する」ということについての法律ってあるんですか?
- 佐々木さん:
-
お察しの通りで、ないんですよ(苦笑)。ですからPMDAに相談・調整をしながら進めています。
例えばインフルエンザのワクチンは鶏卵で作りますが、承認されたのがすごく昔なんですね。昔からあるものは認められているんですが、昔と今では求められる基準も違いますし、単純に前例がないんです。カイコという虫から作ったタンパク質を、ヒト用のワクチンに使うということが。経口だと、なおさらですよね。それが体内に入って大丈夫ですか?というところをクリアしなければなりません。
はじめてPMDAの方にこういうものを作りたいと最初に相談したとき、「前人未到のプロジェクトですね」と言われました(笑)。なかなかないですよね?人から「前人未到」と言われることなんて(笑)。
―想像を絶するプロジェクトに挑まれているんですね…でも、聞いているだけで、なんだかワクワクしてきます。
- 佐々木さん:
-
そうなんですよ(笑)。それが実現できたら、やってやったぜ!ですよね。それをたまに妄想して、夜な夜なニヤニヤしているんです。お酒を飲みながら(笑)。
この会社に転職するにあたって、前の会社の人とかに次の仕事について話をすると「いやいや、無理でしょ?」と笑われることが多かったんです。だから余計に「やってやろう!」というのも、モチベーションになっていますね(笑)。
それに僕でさえこれだけ言われてきているのだから、社長のほうがたくさん「無理だ」と言われているはずなんです。それでもこうやって会社を作って、人を集めて、実現しようとしている。そういう創業者のモチベーションを間近で勉強できているのは、すごくプラスになっていると思います。
―前人未到と言いつつも、PMDAの方々も相談に乗ってくれているんですね?
- 佐々木さん:
- その通りです。無理という感じではなくて、こういうことを考えなきゃねとヒントをくれたり、アドバイスをしてくれています。
- 熊崎さん:
-
AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のプロジェクトにも採択されました。国からも応援してもらっています。
コロナ禍の際に皆さんも実感されたかもしれませんが、日本はワクチン後進国。現状では国産のワクチンがなく、輸入に頼らざるを得ないという大きな課題があります。ところがカイコを使えば、少量多品種のワクチンをスピード感を持って作ることができます。そのうえ、1頭1頭のカイコが生産設備ですから、大きな投資もいらないんですね。
カイコを増やすことで、スケールアップも容易。資材も含めてオール国産で作れることも、大きな魅力と思っていただいています。
任せる風土が、人を成長させる
―山田さんは、スタッフの立場として今の仕事についてどういう想いを持っておられますか?
- 山田さん:
-
楽しいですね。僕が単に実験大好きな実験オタクだからかもしれませんが(笑)。
日々、新しいことだらけなので。勉強になりますし、今は次の時代にむけての土台を築いている途中なので、そこに関与できていることも楽しいです。一歩一歩、着実に仕事を着実に進めていきながら、自分の成長も感じることができます。
―お二方それぞれ、印象に残っている仕事はありますか?
- 佐々木さん:
-
入社してまもない頃、まだ会社のことがよくわかっていないのに外部の協力機関の皆さんにむけて会社説明を任されたことは、鮮明に覚えています。普通は先輩について一緒にやるという感じだと思うんですけど、1人で野に放たれて(笑)、さぁやってこい!みたいな感じで送り出されて(笑)。
- 熊﨑さん:
-
ありましたねそんなことも!誰の後ろにも隠れられない、行くしかない、みたいな(笑)。
- 佐々木さん:
- そうそう(笑)。でもおかげで、自分でも気づいていなかった、自分のできてない部分、こういうことを考えられていなかったなという部分をじかに知ることができたんですよ。自分の成長のためにはよかったと思っています。
―ちなみにPMDAと直接交渉するというお仕事も、業界内では普通のことなのでしょうか?
- 佐々木さん:
-
いや、それも最初は驚きました。普通はもっと上の人とか、薬事担当の人がやることだと思います。そうではない研究開発畑の人たちが、わやわや集まってPMDAに行くというのはあまりないんじゃないかな(笑)。
- 熊﨑さん:
-
マネージャーたちが全員で行ってましたよね(笑)。みんなで行けー!という感じで(笑)。もちろん、外部のエキスパートのお力も借りながらなんですが。
―皆さんでああでもないこうでもないと創り上げている光景が目に浮かびます(笑)。山田さんにとって印象的だったお仕事についても聞かせてください。
- 山田さん:
-
実は僕はちょうど今日、うれしいことがあったんですよ。
- 佐々木さん:
-
おー。何があったの?
- 山田さん:
- 自分が最初から関わっていた受託開発の案件がありまして。鶏の治療薬なんですけど、候補になりそうなタンパク質を作るプロジェクトで。遺伝子のデザインから、カイコで増やして、精製して、お客さんに渡すところまでを任せてもらったんです。できたタンパク質の評価を大学にお願いしていたんですが、ほんとについ先ほど「効果がありそうだ」と連絡がありました!
- 全員:
-
おおお~~~!すごい!おめでとう!(一同、拍手)
- 熊﨑さん:
- 受託開発って、お取引の大事な入口なんです。うまくいけば試薬になったり、次のビジネスチャンスにつながっていくので。なので基本的には、CTOの谷口がすべて受けているんですが、今後はできる人材を増やしていかないといけないので、今回初めて、山田さんに案件を任せてみたという経緯がありまして。私たちとしてもチャレンジだったので、余計にうれしいですね!
それはうれしいですね!おめでとうございます!
個性豊かな社員たちと、柔軟な働き方
―職場の雰囲気なども教えてください。
- 熊﨑さん:
- まろやかではありますね(笑)。いわゆるベンチャーという感じはないのかな。厳しい感じではないです。金髪の人もいますし(笑)。社員のバックグラウンドもいろいろ。元・医療従事者がいたり、半導体工場で働いていた人がいたり。多様性がある職場です。
―ラボにおじゃましたときに感じたんですが、皆さん明るくて、仲がよさそう。飲み会などもあるんですか?
- 佐々木さん:
-
いや、みんな車通勤なので、飲み会は難しいんですよ。でも、花見には毎年行きますね。あと、冬にはみんなで牡蠣を食べに行ったり。糸島の海が近いのでね。
それから、社員の誕生日を祝うという文化もあります(笑)。1人1人にちゃんとケーキを買ってお祝いするんです。
- 山田さん:
-
そういえばあの伝統ってなんで始まったんですか?(笑)。
- 佐々木さん:
-
社長が祝いたがるんだよね(笑)。なにかと世話焼き好きで。
そういう部分も含めて、僕は社長のことをすごい人だなと思っているんですよ。文系出身なのに、理系の人たちを従えてこの会社を動かしていて。指示も的確ですし、すごく勉強されたんだろうなと思う。そのうえで自分がわからないところを僕たちに任せきるところが、またすごいんですよね。どういう結果が欲しいかははっきり言ってくれるんですが、その他は、僕たちに任せてくれます。
ベンチャーの社長って自分でやりたがる人が多いと思うんですけど、ここはそうじゃない。社員を信頼してくれています。その代わり、アイデアを出すだけ、自分の仕事も増えていくんだけどね(笑)。
―話を聞いていると、皆さん思いっきり挑戦されているのがひしひしと伝わってきますが、働き方についても教えてください。勤務時間や休日などはどのような感じですか?
- 佐々木さん:
-
僕は裁量労働制をフルに活かしています。出社時間は、朝8時半から9時のあいだ。子どもを保育園に送ってから出社できるのでありがたいです。帰りの時間も、社員に任されている感じ。僕は19時には帰るようにしているけど、山田くんは?
- 山田さん:
-
僕は8時すぎに来て、18時すぎには帰ってます。あと、この会社のいいなと思うところは、体調がよくないときなどにも休みやすいところ。連携が必要な会社だと休みたくても休めないときがあるんですが、ここはそういうことがありません。だから子育てをしながら働いている人も多いです。
有給休暇も、ゴールデンウイークやお正月に、みんなでまとめて一斉にとっています。こないだのお正月も、10連休だったり。
―待遇についてはいかがですか?
- 山田さん:
- ベンチャーとしては、いいほうなんじゃないでしょうか。
- 熊﨑さん:
- それは、うちの社長の方針なんですよ。ベンチャーだからって、熱意だけじゃだめだと。熱意も大事なんだけど、大企業からリスクをとって入ってきてくれている人たちには、それなりの報酬をあげようというのが、社長の考えで。投資家さんたちからはいつも、「給料を出しすぎ」と怒られているんですが(苦笑)、そこは曲げませんと答えています。「うちは社員を大事にする方針なので」と。
社員のキャリア形成も応援。働きながら博士課程も
―最後に、これからの採用についてお伺いします。「前人未到」の領域ではありますが、どんな経歴をお持ちの方が向いているのでしょうか。
- 熊﨑さん:
- タンパク質の研究やゲノム編集、細胞の培養などの経験がある方は、親和性が高いのではないかなと。あとは製薬メーカーで実際に手を動かして研究開発をしている人なら、即戦力になれると思います。
- 佐々木さん:
- これからのフェーズは商品を世に出していくことも大事になってくるので、品質をいかに担保していくかも課題になってくると思う。そういう方面の経験者も必要になってくるでしょうね。いずれにせよ、バイオ系の知識があればキャッチアップできると思いますよ。
- 山田さん:
-
半導体業界出身の人も、活躍していますよね。
- 佐々木さん:
- 彼は仕事がすごく丁寧で助かっています。この会社は細かい作業が多いんです。試薬をマイクロリットル単位で入れたり、混ぜたり。試薬の量など細かいことを少しでも間違えば、結果が大きく違ってしまいます。ですから丁寧な作業ができる人の方がむいていると思いますね。あとは、結果を着実に次につなげていける人。
―最後に、求職者の皆さんにメッセージをお願いします。
- 佐々木さん:
- 転職先を選ぶポイントは、仕事の内容と、環境だと思います。仕事については、今までにない新しいものづくりにチャレンジできる点が、うちの大きな魅力。環境については、整えようとしているんですけど、整っていないところもまだまだたくさんあって、そこを耕せるのが、うちの面白さだと思います。そういう働き方に興味がある人にはマッチすると思います。
- 熊﨑さん:
- キャリア形成もできると思いますね。働きながら、博士課程もめざせるんですよ。実際、2人の社員が九大の大学院に通っています。社員の成長も応援し続けられる会社でありたいなと。
- 山田さん:
- 確かにこの会社は、いろんな道があります。研究の道、製薬の道を進むこともできるし、経営についても学べる。今後自分で会社を立ち上げたいという方にもおすすめなのかなという気はします。
- 熊﨑さん:
-
そして最終的に、会社として何をめざしていくのか?というと、やっぱり、ヒト用の経口ワクチンを世の中に送りだすことなんです。世界中では、新型コロナだけじゃなく、いろいろな感染症でたくさんの人が命を落としています。でも経口ワクチンができたら、注射器がいらないし、注射を打つ医療人材もいりません。常温でも保存できるので、アフリカの奥地でも使うことができるんです。そういう世界にすることが、私たちの目標。
カイコでしか作れないタンパク質があるし、カイコでしか救えない地球の未来がある。と同時に、KAICOでしか培えないキャリアや人生があると思っています。
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