- 薄さ1ミリ以下。熱にも強いフレキシブルセンサー
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株式会社CASTは2019年、熊本大学内で創業。代表取締役社長の中妻啓さんは、熊本大学大学院先端科学研究部の助教授です。
創業のきっかけとなったのは特殊なセンサーでした。厚さが1ミリ以下と非常に薄いのが特徴で、自在に曲げることも可能。優れた耐熱性も兼ね備えています。
実はこの薄型センサー自体はかなり以前に発明されていたのだとか。しかし活用方法が見いだせないまま、長い間放置されていたのだそうです。 -
そんなセンサーの大きな可能性に、中妻助教授らが注目。研究を重ねた末、活用方法と量産技術の開発に成功し、事業化に向けてこの会社を立ち上げました。
現在は、この薄型センサーでとらえたデータを集約・活用するために、「パルサーレシーバーモジュール」などの周辺機器や、ソフトウェアの開発を進めています。 - 検査が困難だった配管内部のモニタリングに活用
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具体的な活用方法としてCASTが今取り組んでいるのは、製造業で課題となっている配管内のモニタリング(監視)です。
工場の内部には無数のパイプが血管のように張り巡らされています。配管内の腐食や劣化をチェックするため、従来は専門の技能者が手作業で検査を行ってきました。しかし工場の配管は高熱になる場合が多く、また高所や極端に狭い場所など、訪れるのが困難な場所にあるケースも珍しくありません。
そこで同社が開発したのが、「配管減肉モニタリングシステム」。
配管の表面に薄型センサーを張り付け、超音波で配管内部の厚さを計測。そのデータを集約し、PCに伝えることによって、遠隔で管理することを可能にしました。点検の手間が省けるだけでなく、これまで測定が難しかった場所の配管もリアルタイムで監視することができるなど、多くのメリットが期待されています。 - 展示会で大反響。実証実験も進行中
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事業化も着々と進んでいます。2021年より、愛知のメーカーと協力し、センサーと周辺機器の量産化を開始。2022年より展示会などでPRを始めたところ、「面白い!」「こんなのあるんだ」「使ってみたい」という声が殺到。早速、製油所やケミカルプラントなど対象にした試験導入が進んでおり、地元・熊本市の東部環境工場でも実証実験が始まっています。
取締役の深山蘭さんは、「お客様に話をうかがうと、このシステムを使ってモニタリングしたいポイントは、1つのプラントあたり、数か所から1000か所程度あるそうです。しかも配管内がすり減るという現象は、国内だけでなく、世界中の工場にあります。この技術には、想像もできないような伸びしろがあると感じています」と手ごたえを話します。 - アットホームな雰囲気。個々の裁量も大きい
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社内のメンバーは、2023年12月現在、役員3名、正社員7名。本社は熊本市にありますが、メンバーのうち、3名は在宅勤務を基本としています。
取締役の深山さんもその1人で、普段は東京在住だとか。
「家族のためにリモートワークができる会社を探していました。これから参加してもらうメンバーも、仕事の内容によっては、どこに住んでもOKにしたいと思っています」と話します。
社員の半数ほどが中妻代表の教え子ということもあり、「社内は良くも悪くも、大学の研究室のよう(笑)」と深山さん。代表のこともほとんどの社員が「中妻先生」「中妻さん」と呼んでいるそうです。職場はアットホームな雰囲気で、スタートアップ企業にイメージしがちな、ギラギラ、ガツガツした雰囲気がないのも特徴でしょう。
「メンバーは皆さん、純朴。大人が集まって、大人の雰囲気で、黙々とそれぞれの仕事をやっている感じです。やるべきことをやっていれば、上からこまごまと言われることもありません。1人1人に任される裁量がとても大きい会社なので、それを楽しめる人がいいですね」と深山さん。
熊本大学に程近いコンパクトなオフィスには、自分で考え、チャレンジできる環境と、さまざまな領域を経験してスキルの幅を大きく広げていくチャンスが秘められています。
会社概要
- 株式会社CAST
所在地 | 熊本県熊本市中央区渡鹿5丁目7-6 1階 |
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URL | https://www.cast-sensing.com/ |
代表者 | 中妻 啓 |
資本金 | 9,495万5千円 |
設立 | 2019年9月 |
従業員数 | 10名 |